
鷗外(おうがい)


上のリンク先のは若干誤りがあるようなので(もしかすると版の違いなのかもしれませんが)、岩波の鷗外全集(1973年)のを引いておきます。初出は『於母影』(1889年)です。
其一
「レモン」の木は花さきくらき林の中に
こがね色したる柑子は枝もたわゝにみのり
青く晴れし空よりしづやかに風吹き
「ミルテ」の木はしづかに「ラウレル」の木は高く
くもにそびえて立てる国をしるやかなたへ
君と共にゆかまし
其二
高きはしらの上にやすくすわれる屋根は
そらたかくそばだちひろき間もせまき間も
皆ひかりかがやきて人がたしたる石は
ゑみつゝおのれを見てあないとほしき子よと
なぐさむるなつかしき家をしるやかなたへ
君と共にゆかまし
其三
立ちわたる霧のうちに驢馬は道をたづねて
いなゝきつゝさまよひひろきほらの中には
もゝ年経たる竜の所えがほにすまひ
岩より岩をつたひしら波のゆきかへる
かのなつかしき山の道をしるやかなたへ
君と共にゆかまし
ひらがなの現代仮名遣いに直すと次のようになります。
原詩と同じく(!)10音のまとまりが多くなっているのが分かるかと思います。
レモンのきははなさき くらきはやしのなかに
こがねいろしたるこうじは えだもたわわにみのり
あおくはれしそらより しずやかにかぜふき
ミルテのきはしずかに ラウレルのきはたかく
くもにそびえてたてる くにをしるや かなたへ
きみとともにゆかまし
たかきはしらのうえに やすくすわれるやねは
そらたかくそばだち ひろきまもせまきまも
みなひかりかがやきて ひとがたしたるいしは
えみつつおのれをみて あないとおしきこよと
なぐさむるなつかしき いえをしるや かなたへ
きみとともにゆかまし
たちわたるきりのうちに ろばはみちをたずねて
いななきつつさまよい ひろきほらのなかには
ももとせへたるりゅうの ところえがおにすまい
いわよりいわをつたい しらなみのゆきかえる
かのなつかしきやまの みちをしるや かなたへ
きみとともにゆかまし
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This sentence is original and was not derived from translation.
added by tommy_san, August 15, 2013
linked by WestofEden, August 15, 2013
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